概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料名 | ポリスチレン |
| 略記号 | PS、GPPS、HIPS、SPS、EPS |
| IUPAC | poly(1-phenylethene) |
| 英語名 | Polystyrene |
| 日本語名 | ポリスチレン、スチレン樹脂、スチロール樹脂、PS樹脂 |
| 分類 | 熱可塑性樹脂、非晶性樹脂、スチレン系樹脂 |
| プラスチック分類 | 汎用プラスチック |
| 化学式または代表構造 | (C8H8)n、−CH2−CH(C6H5)− の繰り返し構造![]() |
| CAS No. | 9003-53-6 |
| 構造・主成分 | スチレンモノマーを重合した芳香族ビニル系ポリマーであり、主鎖にフェニル基を側鎖として持つ。 |
| 主な用途 | 食品容器、透明ケース、日用品、家電部品、OA機器部品、包装材、発泡体、断熱材、ディスプレイ材、玩具、実験器具など |
ポリスチレン(PS)は、スチレンを重合して得られる代表的な汎用プラスチックである。一般用ポリスチレン(GPPS)は非晶性で透明性、剛性、寸法安定性、電気絶縁性、成形加工性に優れる。成形収縮率が小さく、射出成形や押出成形で外観の良い成形品を得やすい。
一方で、GPPSは耐衝撃性が低く、割れやすい傾向がある。このため、ゴム成分を分散させて耐衝撃性を高めた高衝撃ポリスチレン(HIPS)が多く使用される。HIPSは不透明となるが、耐衝撃性、成形性、コストのバランスが良いため、家電部品、食品容器、シート、包装材などに広く用いられる。
また、発泡させたものは発泡ポリスチレン(EPS、XPS)として包装材、緩衝材、保冷箱、建築断熱材などに使用される。通常のPSは耐熱性、耐候性、耐溶剤性に制限があるため、実使用ではグレード、温度、荷重、応力、薬品濃度、接触時間、成形履歴を確認する必要がある。
特徴
長所
- 透明性に優れ、GPPSでは高光沢で硬質な成形品を得やすい。
- 射出成形、押出成形、熱成形などの加工性が良い。
- 寸法安定性が良く、成形収縮率が小さい。
- 電気絶縁性に優れ、体積抵抗率が高い。
- 着色性、印刷性、接着性、二次加工性が比較的良い。
- 発泡体では軽量性、断熱性、緩衝性に優れる。
- HIPSではGPPSより耐衝撃性を高めやすい。
短所
- GPPSは脆く、衝撃や落下で割れやすい。
- 耐熱性は高くなく、熱変形や軟化に注意が必要である。
- 芳香族炭化水素、ケトン、エステル、塩素系溶剤に弱い。
- 屋外耐候性は高くなく、紫外線により黄変、脆化が起こる場合がある。
- 可燃性であり、電気・電子用途では難燃グレードの検討が必要である。
- 応力が残った成形品では、溶剤接触によりクラックが発生しやすい。
外観
GPPSは無色透明で光沢があり、硬質である。HIPSはゴム成分を含むため一般に乳白色から不透明であり、着色して使用されることが多い。発泡PSは白色発泡体として使用されることが多いが、着色品もある。
耐熱性
一般的なGPPS、HIPSの荷重たわみ温度はおおむね70〜100℃程度であり、高温荷重下では変形に注意が必要である。シンジオタクチックポリスチレン(SPS)は結晶性を持ち、通常のPSより耐熱性が高い特殊グレードである。
耐薬品性
水、希酸、希アルカリ、低級アルコールには比較的安定である。一方で、トルエン、キシレン、ベンゼン、アセトン、MEK、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルムなどでは膨潤、軟化、溶解、応力割れを生じやすい。
加工性
溶融粘度が比較的低く、射出成形、押出成形、シート成形、真空成形に適する。吸水率が低いため、通常は厳密な予備乾燥を必要としない場合が多いが、外観用途や吸湿した材料では乾燥が有効である。
分類上の注意
PSは汎用プラスチックに分類される。GPPS、HIPS、EPS、XPS、SPSはいずれもポリスチレン系材料であるが、透明性、衝撃性、耐熱性、密度、用途が大きく異なるため、同一材料として単純比較しないことが重要である。
構造式


| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 化学式の画像 | 画像タグは使用せず、本文中では白黒構造式相当として −[CH2−CH(C6H5)]n− と表記する。フォント指定を行う場合は、サイト側CSSでMS Pゴシックを指定する。 |
| 代表的な構造単位 | −CH2−CH(C6H5)− |
| モノマーまたは構成単位 | スチレン:CH2=CH−C6H5 |
| 代表構造 | −[CH2−CH(Ph)]n−、Phはフェニル基を示す。 |
| 基本反応式 | n CH2=CH−C6H5 → −[CH2−CH(C6H5)]n− |
ポリスチレンは、ビニル基を持つスチレンモノマーの付加重合により得られる。主鎖は炭素−炭素結合からなり、側鎖にフェニル基を持つため、剛性、透明性、電気絶縁性に優れる一方、脆さや耐溶剤性の低さが生じやすい。
GPPSは一般にアタクチック構造を持つ非晶性樹脂である。HIPSはポリブタジエンなどのゴム粒子をPS相中に分散させた耐衝撃改質材料である。SPSはシンジオタクチック構造を持つ結晶性ポリスチレンであり、一般的なGPPS、HIPSとは耐熱性や耐薬品性が異なる。
種類
| 種類の名称 | 主成分または特徴 | 長所 | 短所 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| GPPS | 一般用ポリスチレン。非晶性で透明な標準グレードである。 | 透明性、剛性、光沢、成形性、寸法安定性が良い。 | 衝撃に弱く、割れやすい。耐溶剤性、耐熱性に制限がある。 | 透明ケース、食品容器、雑貨、文具、ディスプレイ部材、実験器具 |
| HIPS | ゴム成分で耐衝撃性を改良した高衝撃ポリスチレンである。 | GPPSより割れにくく、成形性とコストのバランスが良い。 | 透明性は低く、耐候性、耐溶剤性には注意が必要である。 | 家電部品、食品トレー、冷蔵庫内装、包装シート、玩具、OA機器部品 |
| 耐熱PS | 分子量、共重合、配合により耐熱性を調整したPSである。 | 標準PSより高温変形を抑えやすい。 | PC、PBT、PPSなどのエンプラほどの耐熱性はない。 | 食品容器、熱成形シート、家電部品、包装材 |
| 難燃PS | 難燃剤を配合したPSまたはHIPSである。 | 電気・電子用途で難燃性を付与しやすい。 | 機械特性、流動性、外観、リサイクル性に影響する場合がある。 | 電気機器筐体、OA機器部品、電装部品、難燃シート |
| EPS | ビーズ法発泡ポリスチレン。発泡倍率により密度を調整する。 | 軽量、断熱性、緩衝性、成形自由度が良い。 | 耐熱性、耐溶剤性、圧縮永久変形、燃焼性に注意が必要である。 | 緩衝材、保冷箱、魚箱、包装材、建築断熱材 |
| XPS | 押出発泡ポリスチレン。連続押出により板状発泡体を得る。 | 断熱性、寸法安定性、圧縮強さに優れる。 | 高温環境、溶剤接触、火気には注意が必要である。 | 建築断熱材、土木断熱材、保冷用途、芯材 |
| SPS | シンジオタクチックポリスチレン。結晶性を持つ特殊PSである。 | 通常PSより耐熱性、耐薬品性、寸法安定性に優れる。 | 一般PSより高価であり、流通グレードや用途は限定される。 | 電気・電子部品、耐熱部品、フィルム、コネクタ、精密部品 |
| GF強化SPS | SPSにガラス繊維を配合した強化グレードである。 | 耐熱性、剛性、寸法安定性を高めやすい。 | 透明性はなく、成形収縮の異方性、摩耗、外観に注意が必要である。 | 耐熱電装部品、コネクタ、機構部品、精密成形部品 |
成形加工
| 加工方法 | 適性 | 主な製品例 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 射出成形 | ◎ | 透明ケース、家電部品、雑貨、容器、玩具、電気部品 | 流動性が良く、外観成形に適する。残留応力によるクラックに注意する。 |
| 押出成形 | ◎ | シート、フィルム、板、異形押出材、発泡板 | GPPS、HIPS、XPSで広く使用される。 |
| ブロー成形 | △ | 特殊容器、軽量容器 | 一般にはPE、PP、PETほど多くない。溶融強度調整が必要である。 |
| 圧縮成形 | △ | 発泡体、特殊成形品、試作部品 | 一般的な量産成形では射出成形、押出成形が中心である。 |
| 真空成形 | ◎ | 食品トレー、包装容器、カバー、内装材、ディスプレイ材 | HIPSシート、GPPSシートで多用される。 |
| 発泡成形 | ◎ | EPS成形品、緩衝材、保冷箱、断熱材 | 発泡倍率、密度、融着状態により物性が大きく変わる。 |
| 切削加工 | ○ | 試作部品、治具、模型、板材加工品 | 割れ、欠け、熱による溶融、クラックに注意する。 |
| 接着・溶剤接着 | ○ | ケース、模型、ディスプレイ品、試作品 | 溶剤により白化、クラックが起こる場合がある。 |
代表的な成形条件
| 項目 | 単位 | GPPS | HIPS | SPS | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 乾燥温度 | ℃ | 60〜80 | 60〜80 | 100〜130 | 通常PSは低吸水であるが、外観用途では乾燥が有効である。 |
| 乾燥時間 | 時間 | 1〜3 | 1〜3 | 3〜5 | 材料状態、乾燥機、包装開封後の保管条件により調整する。 |
| シリンダー温度 | ℃ | 180〜240 | 180〜240 | 280〜320 | グレード、流動性、金型構造により異なる。 |
| 金型温度 | ℃ | 30〜60 | 30〜60 | 80〜140 | SPSでは結晶化制御のため高めの金型温度が必要となる場合がある。 |
| 成形収縮率 | % | 0.2〜0.6 | 0.3〜0.7 | 0.4〜1.2 | GF強化品では流動方向と直角方向で差が出る。 |
| 注意点 | − | シルバー、クラック、焼け | ヒケ、ウェルド、外観ムラ | 結晶化、反り、乾燥不足 | 実成形では成形機、金型、肉厚、滞留時間を確認する。 |
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | GPPS | HIPS | 耐熱PS | SPS | GF強化SPS | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.04〜1.06 | 1.03〜1.07 | 1.04〜1.07 | 1.03〜1.05 | 1.30〜1.55 | 発泡PSでは発泡倍率により大幅に低下する。 |
| 引張強さ | MPa | 35〜60 | 20〜35 | 40〜60 | 55〜75 | 90〜160 | 代表値であり、グレードにより異なる。 |
| 伸び | % | 1〜3 | 20〜60 | 1〜5 | 2〜5 | 1〜3 | HIPSはゴム改質により伸びが大きい。 |
| 曲げ弾性率 | GPa | 2.8〜3.5 | 1.5〜2.5 | 2.8〜3.5 | 2.2〜3.0 | 6〜12 | GF強化品は高剛性である。 |
| アイゾット衝撃強さ | kJ/m2 | 1〜3 | 5〜20 | 1〜5 | 2〜5 | 5〜12 | ノッチ付きの目安である。 |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 75〜95 | 70〜90 | 90〜105 | 180〜230 | 230〜260 | 荷重条件により異なる。 |
| 融点またはガラス転移温度 | ℃ | Tg 約95〜105 | Tg 約90〜105 | Tg 約100〜110 | Tm 約260〜275 | Tm 約260〜275 | 通常PSは非晶性で明確な融点を持たない。 |
| 連続使用温度 | ℃ | 60〜80 | 60〜80 | 70〜90 | 130〜170 | 150〜180 | 荷重、雰囲気、寿命設計により確認が必要である。 |
| 吸水率 | % | 0.03〜0.10 | 0.03〜0.10 | 0.03〜0.10 | 0.02〜0.06 | 0.03〜0.10 | 24時間水中浸漬の目安であり、PA、PBT、PET、PUなどより吸水は小さい。 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1015以上 | 1014〜1016 | 1015以上 | 1015以上 | 1013〜1015 | 帯電防止グレードでは低下する。 |
| 難燃性 | UL94 | HB相当 | HB相当 | HB相当 | HB〜V-0相当品あり | HB〜V-0相当品あり | 難燃グレードではV-2、V-0相当品がある。 |
| 酸素指数 | % | 約18〜19 | 約18〜20 | 約18〜20 | 約18〜21 | 配合により変化 | 一般PSは燃えやすい材料である。 |
耐薬品性
ポリスチレンは水、低濃度の酸、低濃度のアルカリ、低級アルコールには比較的安定である。一方で、PSのSP値に近い芳香族炭化水素、ケトン、エステル、塩素系溶剤では膨潤、軟化、溶解を生じやすい。実使用では薬品名だけでなく、濃度、温度、応力、接触時間、成形品の残留応力を確認する必要がある。
| 薬品・溶剤 | 分類 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 塩酸 | 酸類 | ○ | 希塩酸では比較的安定である。高温、長時間では確認が必要である。 |
| 硫酸 | 酸類 | ○〜△ | 希硫酸では比較的安定であるが、濃硫酸や高温では劣化に注意する。 |
| 酢酸 | 酸類 | ○〜△ | 濃度や温度により影響を受ける場合がある。 |
| 水酸化ナトリウム | アルカリ類 | ○ | 低濃度、常温では比較的安定である。 |
| 水酸化カリウム | アルカリ類 | ○ | 高温、高濃度では確認が必要である。 |
| エタノール | 低級アルコール類 | ○〜△ | 短時間では比較的安定であるが、応力下ではクラックに注意する。 |
| IPA | 低級アルコール類 | ○〜△ | 洗浄用途では残留応力、接触時間を確認する。 |
| メタノール | 低級アルコール類 | ○〜△ | 常温短時間では比較的安定である。 |
| グリセリン | 高級アルコール類 | ○ | 一般に影響は小さいが、添加剤抽出には注意する。 |
| MMB | 高級アルコール類・グリコールエーテル類 | △ | 条件により膨潤や応力割れの可能性がある。 |
| トルエン | 芳香族炭化水素類 | × | 膨潤、軟化、溶解を生じやすい。 |
| キシレン | 芳香族炭化水素類 | × | PSを強く侵しやすい。 |
| ベンゼン | 芳香族炭化水素類 | × | 溶解性が高く、実用上は不適である。 |
| ヘキサン | 脂肪族炭化水素類 | △〜○ | 芳香族溶剤より影響は小さいが、長時間接触では確認が必要である。 |
| シクロヘキサン | 脂肪族炭化水素類 | △ | 膨潤や応力割れに注意する。 |
| アセトン | ケトン | × | 表面を侵し、軟化やクラックを生じやすい。 |
| MEK | ケトン | × | 溶解、膨潤を生じやすい。 |
| 酢酸エチル | エステル | × | 膨潤、軟化、溶解に注意する。 |
| 酢酸ブチル | エステル | × | 塗装溶剤接触では応力割れを起こしやすい。 |
| 塩化メチレン | 塩素系溶剤 | × | PSを強く侵し、溶解する。 |
| クロロホルム | 塩素系溶剤 | × | 溶解性が高い。 |
| 水 | 水・温水 | ◎ | 常温水では安定である。 |
| 温水 | 水・温水 | ○〜△ | 高温では変形、寸法変化、応力割れに注意する。 |
| 鉱物油 | 油 | ○〜△ | 油種、添加剤、温度により確認が必要である。 |
| ガソリン | 燃料・油 | × | 芳香族成分を含むため膨潤、軟化を生じやすい。 |
SP値(溶解度パラメータ)
| 材料 | 代表的なSP値 δ MPa1/2 | 備考 |
|---|---|---|
| ポリスチレン | 約18.5〜19.0 | 芳香族炭化水素、ケトン、エステル、塩素系溶剤に近く、膨潤・溶解しやすい。 |
SP値は溶解・膨潤の傾向を推定する目安であるが、耐薬品性をSP値だけで判断することはできない。実際には結晶性、分子量、配合、添加剤、成形応力、温度、濃度、接触時間、薬品の混合状態が影響する。
溶解性の目安
| SP値差 | 溶解・膨潤の目安 | 判定 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 膨潤・軟化しやすい | × |
| 2〜5 | 条件により膨潤する | △ |
| 5〜8 | 短時間接触では比較的安定 | ○ |
| 8以上 | 溶解・膨潤しにくい | ◎ |
SP値から見た耐溶剤性
ポリスチレンの代表SP値を18.7 MPa1/2として、代表的な溶剤とのSP値差を整理すると以下のようになる。評価はSP値差を中心とした目安であり、実際の耐薬品性試験を代替するものではない。
| 薬品名 | SP値 MPa1/2 | PSとの差 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| トルエン | 約18.2 | 約0.5 | × | 溶解・膨潤しやすい。 |
| 酢酸エチル | 約18.6 | 約0.1 | × | 軟化、クラックに注意する。 |
| MEK | 約19.0 | 約0.3 | × | 強い影響を受ける。 |
| アセトン | 約19.9 | 約1.2 | × | 表面荒れ、白化、割れを生じやすい。 |
| 塩化メチレン | 約20.2 | 約1.5 | × | 溶解性が高い。 |
| シクロヘキサン | 約16.8 | 約1.9 | △〜× | 条件により膨潤する。 |
| ヘキサン | 約14.9 | 約3.8 | △ | 長時間接触では確認が必要である。 |
| IPA | 約23.5 | 約4.8 | ○〜△ | 応力下ではクラックに注意する。 |
| エタノール | 約26.0 | 約7.3 | ○ | 短時間接触では比較的安定である。 |
| 水 | 約47.9 | 約29.2 | ◎ | 常温水では安定である。 |
評価基準:◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適
製法
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 原料 | 主原料はスチレンモノマーである。スチレンは一般にエチルベンゼンの脱水素により製造される。 |
| 重合方法 | 塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合などが用いられる。GPPSでは塊状重合や懸濁重合が用いられることが多い。 |
| HIPSの製造 | ポリブタジエンなどのゴム成分をスチレン中に溶解・分散させ、重合中に相分離とグラフト化を進めてゴム粒子を形成する。 |
| SPSの製造 | メタロセン系触媒などを用いて、シンジオタクチック立体規則性を持つポリスチレンを製造する。 |
| ペレット化やコンパウンド | 重合後、未反応モノマーを除去し、安定剤、滑剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、ゴム改質材、ガラス繊維などを配合してペレット化する。 |
| 添加剤・充填材・強化材 | 耐熱性、難燃性、帯電防止性、耐衝撃性、摺動性、成形性、食品接触適合性などを目的に各種添加剤が用いられる。 |
代表的な反応式
n CH2=CH−C6H5 → −[CH2−CH(C6H5)]n−
工程の概要
- スチレンモノマーを精製する。
- 開始剤または触媒を用いて重合を行う。
- GPPSでは透明性、分子量、流動性を制御する。
- HIPSではゴム粒子径、ゴム含有量、グラフト状態を制御する。
- 必要に応じて難燃剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、強化材を混練する。
- 押出機で溶融混練し、ストランドカットまたはアンダーウォーターカットによりペレット化する。
詳細な利用用途
| 用途分野 | 主な用途 | 使用される主なグレード | 選定上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車 | 内装部品、カバー、軽量部材、発泡芯材、包装トレー | HIPS、難燃HIPS、発泡PS、SPS | 耐熱性、耐候性、VOC、アウトガス、難燃性を確認する。 |
| 電気・電子 | 筐体、絶縁部品、スイッチ周辺、OA機器部品、コネクタ周辺部品 | HIPS、難燃PS、SPS、GF強化SPS | UL94、CTI、耐熱性、寸法安定性、難燃剤規制を確認する。 |
| 機械部品 | 軽負荷カバー、ケース、試作部品、治具、模型 | GPPS、HIPS、SPS | 衝撃、摺動、摩耗、応力割れには注意が必要である。 |
| 医療・理化学 | シャーレ、試験管、培養容器、ディスポーザブル部品、透明ケース | GPPS、医療対応PS | 滅菌方法、溶出、薬品接触、透明性、規格適合性を確認する。 |
| 食品機械・食品包装 | 食品トレー、カップ、蓋材、容器、保冷箱、包装材 | GPPS、HIPS、EPS、耐熱PS | 食品衛生、耐油性、耐熱性、電子レンジ適性、スチレン残留を確認する。 |
| 建築・設備 | 断熱材、保温材、装飾材、芯材、模型材 | EPS、XPS、難燃発泡PS | 火気、難燃性、圧縮強さ、吸水性、長期寸法安定性を確認する。 |
| 包装・物流 | 緩衝材、保護材、箱、トレー、輸送用発泡体 | EPS、HIPS、GPPS | 衝撃吸収、圧縮強さ、静電気、リサイクル性を確認する。 |
| 日用品・雑貨 | 文具、ケース、玩具、収納用品、ディスプレイ品 | GPPS、HIPS | 割れ、耐候性、溶剤接触、燃焼性に注意する。 |
用途別選定の目安
| 用途 | 推奨グレード | 理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 透明ケース | GPPS | 透明性、光沢、成形性が良い。 | 衝撃割れ、溶剤クラックに注意する。 |
| 食品トレー | HIPS、GPPS | シート押出、真空成形に適する。 | 耐熱性、食品接触適合性を確認する。 |
| 筐体 | HIPS、難燃HIPS | 耐衝撃性と成形性のバランスが良い。 | 難燃性、耐候性、耐熱性を確認する。 |
| フィルム・シート | GPPS、HIPS、SPS | 押出成形、二次成形に適する。 | 脆さ、白化、熱収縮に注意する。 |
| コネクタ周辺 | SPS、GF強化SPS | 耐熱性、寸法安定性、電気特性が良い。 | 一般PSとは成形温度が大きく異なる。 |
| 断熱材 | EPS、XPS | 軽量で断熱性が高い。 | 火気、溶剤、長期圧縮荷重に注意する。 |
法規制・適合確認
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| RoHS | 電気・電子用途では、特定有害物質、難燃剤、顔料、添加剤の適合を確認する。 |
| REACH | EU向け用途ではSVHC、添加剤、難燃剤、着色剤の登録・制限を確認する。 |
| 食品衛生 | 食品容器、トレー、カップでは食品接触適合グレードを選定する。 |
| FDA | 米国向け食品接触用途ではFDA適合グレードの確認が必要である。 |
| 医療用途 | 生体適合性、滅菌方法、抽出物、溶出物、薬液接触を確認する。 |
| 難燃規格 | 電気・電子部品ではUL94、GWIT、CTIなど要求規格に応じたグレードを選定する。 |
注意点
- GPPSは脆性破壊しやすく、落下衝撃や薄肉部ではHIPS、ABS、PCなどとの比較が必要である。
- 成形品に残留応力があると、アルコール、油、溶剤、洗浄剤で応力割れが起こる場合がある。
- 芳香族溶剤、ケトン、エステル、塩素系溶剤はPSを侵しやすい。
- 発泡PSは溶剤、火気、高温、長期圧縮荷重に注意する。
- 難燃グレードでは添加剤による物性、外観、法規制、リサイクル性への影響を確認する。
- 食品接触、医療、電気・電子用途では、グレードごとの規格適合を必ず確認する。
- 高温使用では熱変形、熱劣化、アウトガス、寸法変化を確認する。
関連材料との比較
| 比較材料 | 特徴 | 対象材料との違い |
|---|---|---|
| ABS樹脂 | 耐衝撃性、外観性、塗装性、めっき性のバランスが良いスチレン系樹脂である。 | PSより耐衝撃性に優れるが、透明性は一般に低い。筐体用途ではABSが選ばれやすい。 |
| AS樹脂 | アクリロニトリルとスチレンの共重合体であり、透明性、耐薬品性、硬さに優れる。 | PSより耐薬品性と耐熱性を高めやすいが、衝撃性には注意が必要である。 |
| アクリル樹脂 | 高透明性、高光沢、耐候性、表面硬度に優れる透明樹脂である。 | PSより透明性、耐候性、表面硬度に優れるが、一般にコストは高い。 |
| ポリカーボネート | 透明性、耐衝撃性、耐熱性に優れるエンジニアリングプラスチックである。 | PCはPSより大幅に耐衝撃性と耐熱性が高いが、成形温度、コスト、耐薬品性の確認が必要である。 |
| ポリ塩化ビニル | 難燃性、耐薬品性、耐候性に優れ、硬質から軟質まで幅広い。 | PSは透明性と成形性に優れるが、PVCは難燃性と耐薬品性で有利な場合が多い。 |
| ポリプロピレン | 軽量で耐薬品性、耐熱性、ヒンジ性に優れるポリオレフィンである。 | PPはPSより耐薬品性、軽量性、耐疲労性に優れるが、PSは剛性、透明性、寸法安定性が良い。 |
| PETG樹脂 | 透明性、耐衝撃性、熱成形性に優れる非晶性ポリエステルである。 | PETGはPSより割れにくく、透明容器やシート用途で代替候補となる。高温水や薬品には確認が必要である。 |
| 発泡ポリスチレン | PSを発泡させた軽量材料であり、断熱性、緩衝性に優れる。 | 樹脂成分はPSであるが、材料体積の大部分が空気であり、密度、圧縮特性、断熱性が大きく異なる。 |
代表的なメーカー
| メーカー | 代表製品・ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| PSジャパン株式会社 | PSJ-POLYSTYRENE | 日本国内の代表的なポリスチレンメーカーであり、GPPS、HIPSなど各種PS材料を展開している。 |
| 東洋スチレン株式会社 | トーヨースチロール、Toyo Styrol | ポリスチレン樹脂を展開する国内メーカーであり、包装、家電、食品容器、シート用途などに供給している。 |
| DIC株式会社 | 代表例:DICスチロール系材料、PS関連材料 | スチレン系樹脂、機能性材料、コンパウンド関連で実績を持つ化学メーカーである。製品名や供給範囲は時期により確認が必要である。 |
| INEOS Styrolution | Styrolution PS、Styrolux、Styroflexなど | スチレン系樹脂を広く展開するグローバルメーカーであり、PS、ABS、SAN、特殊スチレン系材料を供給している。 |
| Trinseo | STYRON、STYRON A-TECHなど | ポリスチレン、ABS、PC、ラテックスなどを展開する材料メーカーである。 |
| SABIC | PS、HIPS系グレード | 汎用樹脂、エンプラ、化学品を展開するグローバルメーカーであり、地域によりPS系材料を供給している。 |
| Chi Mei Corporation | POLYREX、PH、その他PS系グレード | ABS、SAN、PS、PMMAなどのスチレン系材料を展開する台湾の大手メーカーである。 |
| LG Chem | GPPS、HIPS系グレード | 汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、化学品を展開する韓国の大手化学メーカーである。 |
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