ポリエーテルエーテルケトン

材料名ポリエーテルエーテルケトン
略記号PEEK
英語名Polyether Ether Ketone
分類結晶性スーパーエンプラ、PAEK系樹脂
構造・主成分芳香族エーテル結合とケトン結合を持つ高耐熱樹脂
主な用途航空宇宙、医療インプラント、半導体、摺動部品、ギア

ポリエーテルエーテルケトンは、芳香族エーテル結合とケトン結合を持つ高耐熱樹脂である。融点約334℃、連続使用温度高い、耐薬品性、耐摩耗性、難燃性、耐放射線性が良い。

材料選定では、高価で高温成形が必要。用途、温度、荷重、薬品、成形方法に応じてグレードを選定する必要がある。

特徴

  • 融点約334℃、連続使用温度高い、耐薬品性、耐摩耗性、難燃性、耐放射線性が良い
  • 高価で高温成形が必要
  • グレード、充填材、共重合成分、硬化条件により物性が大きく変化する。
  • 実使用では温度、湿度、応力、薬品接触時間を含めて評価する必要がある。
長所
  • 融点約334℃、連続使用温度高い、耐薬品性、耐摩耗性、難燃性、耐放射線性が良い
  • 用途に応じたグレード展開がある。
  • 金属、ガラス、汎用樹脂の代替材料として使える場合がある。
短所
  • 高価で高温成形が必要
  • 高温、応力、薬品、吸水、添加剤の影響で性能が変化する。
  • 量産前にはメーカー物性表と実使用条件での確認が必要である。
成形加工

ポリエーテルエーテルケトンの加工性は種類とグレードにより異なる。熱可塑性樹脂では射出成形・押出成形が中心となり、熱硬化性樹脂では注型、圧縮、積層、硬化成形が中心となる。

加工方法適性主な製品例
射出成形グレードにより成形部品、電気電子部品、機械部品に使用する
押出成形シート、フィルム、チューブ、板材に使用する
圧縮・注型・硬化成形△〜◎熱硬化性樹脂や高粘度材料では主要加工法となる
切削加工丸棒、板材、試作部品、治具に使用する
加工条件
項目射出成形射出成形押出成形
標準30%ガラス入りナチュラル
乾燥150℃ × 3時間150℃ × 3時間150℃ × 3時間
成形温度(℃)370390390~410
成形圧力(MPa)100100
金型温度(℃)170170
成形収縮率(%)1.10.5

構造式

PEEK

−Ar−O−Ar−O−Ar−CO−を基本とするPAEK構造。構造中の官能基、結晶性、架橋密度、芳香族骨格、充填材の有無により、耐熱性、耐薬品性、機械的性質、成形性が変化する。

種類

標準グレード
名称標準ポリエーテルエーテルケトン
構成芳香族エーテル結合とケトン結合を持つ高耐熱樹脂
特徴融点約334℃、連続使用温度高い、耐薬品性、耐摩耗性、難燃性、耐放射線性が良い
主な用途航空宇宙、医療インプラント、半導体、摺動部品、ギア
特徴
  • 標準的な物性バランスを持つ。
  • 汎用的な成形・加工用途に使いやすい。
強化・改質グレード
名称強化・改質ポリエーテルエーテルケトン
構成ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、耐候剤、潤滑剤、共重合成分などで改質したグレード
特徴剛性、耐熱性、耐候性、難燃性、摺動性、寸法安定性などを改善する
主な用途電気電子部品、自動車部品、機械部品、構造部品、機能部材
特徴
  • 標準グレードより特定性能を高めた材料である。
  • 充填材により比重、成形収縮、異方性、耐薬品性が変化する。

代表的な物性値又は機械的性質

性質単位標準30%ガラス
繊維強化
30%炭素
繊維強化
比重1.301.521.44
引張強さMPa99176241
引張伸び%8045
曲げ強さMPa145235335
曲げ弾性率GPa3.810.121.6
アイゾット衝撃強さ
(ノッチ付き)
kJ/m²6 ~ 107 ~ 125 ~ 9
ロックウェル硬さMスケールM95〜M100M100〜M105M102〜M108
ロックウェル硬さRスケールR120〜R126R126〜R130R128〜R132
荷重たわみ温度
(1.82MPa)
152300300
線膨張係数
(流動方向)
×10⁻⁵ /K
(= µm/m・K)
4.5 ~ 5.51.5 ~ 2.50.5 ~ 1.5
線膨張係数
(直交方向)
×10⁻⁵ /K
(= µm/m・K
4.5 ~ 5.53.0 ~ 5.02.0 ~ 4.0
難燃性UL94V-0V-0V-0
体積固有抵抗Ω・cm10¹⁵ ~ 10¹⁸
高絶縁
10¹⁴ ~ 10¹⁷
ほぼ絶縁
10⁻¹ ~ 10³
導電~半導電

耐薬品性

ほとんどの薬品に強い。濃硫酸など特殊強酸には注意。

薬品・溶剤耐性備考
多くは常温で比較的安定であるが、吸水・加水分解型材料では注意する
△〜○強酸では劣化する材料がある
アルカリ△〜○ポリエステル、PC、熱硬化性樹脂では高温・高濃度に注意する
アルコール○〜△応力クラックや膨潤は材料により異なる
ケトン△〜×非晶性樹脂や塗料系樹脂では膨潤・溶解に注意する
芳香族溶剤△〜×膨潤、白化、クラックの可能性がある
油・燃料○〜△ポリアミド、POM、PBT、PPS、PEEKなどは比較的良好な場合が多い

更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。

SP値(溶解度パラメータ)

ポリエーテルエーテルケトンのSP値はグレード、結晶化度、架橋密度、充填材により変動する。溶解性はSP値だけでなく、温度、応力、薬品濃度、接触時間で判断する必要がある。

項目SP値(δ)
MPa1/2
備考
PEEK(標準グレード)22.5 ~ 23.5非常に高い耐薬品性を持つ。酸・アルカリ・炭化水素系に対して安定。
PEEK GF30
(ガラス繊維30%)
22.5 ~ 23.8ガラス繊維添加により寸法安定性向上。耐溶剤性は標準PEEKと同等レベル。
PEEK CF30
(炭素繊維30%)
22.0 ~ 23.5炭素繊維添加で耐摩耗性・剛性向上。溶剤浸透がさらに低下する傾向。
PEEK 高結晶化グレード22.8 ~ 23.8結晶化度向上により耐薬品性がさらに高い。高温溶剤環境向け。
PEEK 低結晶化グレード22.0 ~ 23.0若干溶剤膨潤しやすいが、一般エンプラより遥かに高耐性。
PEEK/PTFE摺動グレード21.8 ~ 23.0PTFE添加で摺動性向上。強極性溶剤で添加剤抽出の可能性あり。
溶解性の目安
Δδ挙動
0〜2溶解しやすい
2〜5膨潤・軟化
5以上溶解しにくい
SP値から見た耐溶剤性
溶剤SP値(δ)
MPa1/2
耐性特徴・注意点
47.9吸水は少なく、高温水でも比較的安定。
メタノール29.7常温ではほぼ影響なし。
エタノール26.0一般用途では極めて安定。
IPA(イソプロパノール)23.5PEEKのSP値に近いが膨潤は小さい。
アセトン20.0短時間では安定だが、高温長時間で注意。
MEK(メチルエチルケトン)19.0応力負荷状態では環境応力割れに注意。
トルエン18.2芳香族炭化水素には比較的強い。
キシレン18.0高温時は膨潤の可能性あり。
酢酸エチル18.6長期浸漬では若干物性低下の可能性。
NMP(N-メチル-2-ピロリドン)23.1PEEKを侵しやすい代表的溶剤。高温で膨潤・劣化しやすい。
DMF(ジメチルホルムアミド)24.8高温条件で膨潤リスクあり。
DMSO(ジメチルスルホキシド)26.7高温で浸透しやすく注意。
濃硫酸35以上×PEEKを溶解可能。特に濃硫酸は危険。
濃硝酸約31酸化劣化の可能性あり。
水酸化ナトリウム47付近アルカリ耐性は非常に高い。

◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適

※ 耐溶剤評価は、PEEKのSP値中央値(約23 MPa1/2)を基準とし、溶剤とのSP値差および実際の化学耐性データを総合的に考慮した参考評価です。

実務上の注意
  • SP値は溶解・膨潤予測の一次判断であり、耐久性そのものではない。
  • 成形残留応力がある場合は、短時間の薬品接触でもクラックが発生する場合がある。
  • 最終判断は実使用条件での浸漬試験、応力負荷試験、温度サイクル試験で行う。
特に注意が必要な溶剤
  • 濃硫酸
    PEEKを溶解させる数少ない薬品。高濃度では短時間でも危険。
  • NMP・DMF・DMSO
    高極性溶剤であり、特に高温環境下では膨潤・物性低下を起こす可能性がある。
  • 高温ケトン系溶剤(MEK・アセトンなど)
    常温では比較的安定だが、応力負荷+高温条件では環境応力割れの原因になる場合がある。

製法

  • 4,4′-ジフルオロベンゾフェノンとヒドロキノンを極性溶媒であるジフェニルスルホン中、窒素下で180℃まで昇温する。
  • 次に炭酸カリウムを添加して、ヒドロキノンをフェノラート化した後、320℃で重合を行う。
PEEK製法

詳細な利用用途

代表用途
  • 航空宇宙
  • 医療インプラント
  • 半導体
  • 摺動部品
  • ギア
工業用途
  • 電気電子部品
  • 自動車部品
  • 機械部品
  • 耐熱・耐薬品部材
  • フィルム、シート、塗料、接着、複合材用途

関連材料との比較

比較材料違い選定ポイント
PVCポリエーテルエーテルケトンはPVCとは耐熱性、成形性、耐薬品性、価格帯が異なる難燃・低コストならPVC、高機能用途なら対象材料を検討する
PCPCは透明性と耐衝撃性に優れる透明防護用途ではPC、高耐薬品・高耐熱用途では他材料を検討する
PBTPBTは成形性と電気特性に優れる電装部品ではPBT、より高耐熱用途ではスーパーエンプラを選ぶ
PEEKPEEKは高耐熱・高耐薬品の代表材料である最高性能が必要ならPEEK、コスト重視なら汎用エンプラを検討する

代表的なメーカー

メーカー代表的な製品・商品名備考
Victrex代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
Solvay KetaSpire代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
Evonik VESTAKEEP代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
Ensinger TECAPEEK代表グレード又は関連製品詳細はメーカー技術資料で確認する
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