ポリブチレンテレフタレート

概要

項目内容
材料名ポリブチレンテレフタレート
略記号PBT
IUPACpoly(butane-1,4-diyl benzene-1,4-dicarboxylate)
英語名Polybutylene Terephthalate
日本語名・別名ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタラート、PBT樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂
分類熱可塑性樹脂、結晶性樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂
プラスチック分類エンジニアリング・プラスチック
化学式または代表構造(C12H12O4)n、代表構造単位:−O−(CH2)4−O−CO−C6H4−CO−
CAS No.24968-12-5
構造・主成分テレフタル酸又はジメチルテレフタレートと1,4-ブタンジオールから得られる芳香族ポリエステルである。
主な用途自動車電装部品、コネクタ、リレー、スイッチ、センサー部品、モーター部品、家電部品、機械部品、摺動部品など

ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、代表的な結晶性芳香族ポリエステル系エンジニアリング・プラスチックである。一般に、成形性、寸法安定性、電気絶縁性、耐薬品性、耐摩耗性のバランスが良く、自動車部品や電気・電子部品で広く使用される材料である。

PBTは、同じポリエステル系樹脂であるポリエチレンテレフタレート(PET)よりも結晶化速度が速く、射出成形で扱いやすいことが多い。一方で、酸・アルカリ・高温水蒸気などの加水分解条件には注意が必要であり、実使用では温度、湿度、薬品濃度、接触時間、荷重、応力、成形時の乾燥状態を確認する必要がある。

市販グレードでは、非強化PBTのほか、ガラス繊維強化PBT、難燃PBT、耐加水分解PBT、低反りPBT、摺動PBT、食品接触対応グレード、レーザーマーキング対応グレードなどがある。材料選定では、PBTを単一材料として扱わず、強化材、難燃剤、耐熱安定剤、耐候剤、滑剤、充填材、リサイクル材の有無を分けて判断する必要がある。

特徴

項目内容
長所成形性、寸法安定性、電気絶縁性、耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性のバランスが良い。GF強化グレードでは剛性と荷重たわみ温度が大きく向上する。
短所加水分解、強アルカリ、強酸、高温水、成形乾燥不足による物性低下に注意が必要である。非強化グレードは高荷重用途では剛性不足となる場合がある。
外観一般に白色から乳白色のペレットであり、成形品は不透明から半透明である。着色性は比較的良好である。
耐熱性融点は一般に220〜230℃程度である。連続使用温度はグレードにより異なるが、非強化で80〜120℃程度、GF強化・耐熱グレードで120〜150℃程度が目安である。
耐薬品性油、燃料、脂肪族炭化水素、アルコール類には比較的安定な場合が多い。強酸、強アルカリ、熱水、蒸気、エステル系溶剤、塩素系溶剤では条件により劣化、膨潤、加水分解が生じる。
加工性射出成形性に優れ、結晶化速度が比較的速いため成形サイクルを短くしやすい。成形前乾燥は重要であり、乾燥不足では加水分解による分子量低下が起こりやすい。
分類上の注意PBTはポリエステル系エンプラであり、PETPTTPBNとは構造が近いが、結晶化速度、成形性、耐熱性、吸水性、用途が異なる。

構造式

ポリブチレンテレフタレート

−O−(CH2)4−O−CO−C6H4−CO−。構造中の官能基、結晶性。

ポリブチレンテレフタレートの代表的な繰り返し構造単位は、下記のように表される。

項目内容
代表的な構造単位−O−(CH2)4−O−CO−C6H4−CO−
分子式(C12H12O4)n
構成単位テレフタル酸成分と1,4-ブタンジオール成分からなる芳香族ポリエステルである。
モノマーテレフタル酸又はジメチルテレフタレート、1,4-ブタンジオール
共重合・変性耐衝撃改良、難燃化、耐加水分解化、低反り化、摺動性付与、レーザー溶着対応、食品接触対応などを目的として、添加剤、エラストマー、無機フィラー、ガラス繊維などが配合される。

構造上は、芳香環を持つテレフタレート骨格と柔軟なブチレン鎖を含むため、剛性、耐熱性、結晶性、成形流動性のバランスを取りやすい。PETよりもメチレン鎖が長く、結晶化が進みやすいため、射出成形用材料として扱いやすい場合が多い。

種類

種類の名称主成分または特徴長所短所主な用途
非強化PBTPBT単体を主体とする標準グレード成形性、電気特性、表面外観が良いGF強化品に比べて剛性、HDT、寸法安定性は低い小型部品、電装部品、一般成形品
GF強化PBTPBTにガラス繊維を配合した強化グレード剛性、強度、耐熱性、寸法安定性が高い反り、異方性、表面荒れ、金型摩耗に注意コネクタ、センサーケース、モーター部品、自動車部品
難燃PBT難燃剤を配合したPBTUL94 V-0相当を狙えるグレードがある難燃剤により機械特性、流動性、耐トラッキング性が変化するコネクタ、リレー、スイッチ、電気電子部品
耐加水分解PBT加水分解抑制を目的に安定化したグレード高温高湿、冷却水、車載環境での耐久性を高めやすい強酸、強アルカリ、蒸気条件では十分な確認が必要である自動車電装部品、センサー部品、湿熱環境部品
低反りPBTGF、無機フィラー、アロイ化などで反りを抑えたグレード精密成形品の寸法安定性を高めやすい衝撃性、流動性、外観が変化する場合がある薄肉精密部品、コネクタ、ケース部品
摺動PBTPTFE、シリコーン、潤滑剤などを配合したグレード摩擦係数や摩耗量を低減しやすい接点汚染、アウトガス、塗装・接着性低下に注意ギア、軸受、摺動ガイド、カム部品
食品接触対応PBT食品衛生、FDA、EU食品接触などを意識したグレード食品機械部品や厨房機器部品で検討しやすい法規制適合はグレード、色、添加剤、使用温度で確認が必要である食品機械部品、ポンプ部品、電装部品

成形加工

加工方法適正内容注意点
射出成形PBTの代表的な加工方法である。コネクタ、リレー、スイッチ、自動車電装部品などに広く使用される。乾燥不足、過剰滞留、金型温度不足、反り、ウェルド強度に注意する。
押出成形フィルム、シート、チューブ、異形押出で使用される場合がある。分子量、溶融粘度、乾燥状態、結晶化制御が重要である。
ブロー成形専用グレードでは検討可能であるが、一般には射出成形用途が中心である。溶融張力、結晶化、肉厚制御を確認する必要がある。
圧縮成形試験片、板材、特殊成形で使われる場合がある。加熱条件、結晶化、残留応力、ボイドに注意する。
真空成形シートグレードでは可能な場合があるが、一般的なPBT射出グレードでは主用途ではない。結晶化速度が速いため、加熱条件と成形温度範囲の管理が必要である。
切削加工板材、丸棒、試作部品の切削加工が可能である。GF強化品では工具摩耗、バリ、繊維露出、寸法異方性に注意する。
溶着超音波溶着、振動溶着、レーザー溶着対応グレードで検討される。GF量、顔料、難燃剤、レーザー透過性、溶着リブ設計を確認する。
塗装・印刷表面処理やプライマーにより対応できる場合がある。結晶性樹脂であり、密着性は条件依存である。離型剤、油分、添加剤の影響を確認する。
接着エポキシ系、ウレタン系、シアノアクリレート系などで検討される。表面処理、プライマー、粗化、薬品耐性、熱サイクル後の密着性評価が必要である。
代表的な成形条件
項目代表条件備考
予備乾燥110〜130℃、3〜5時間程度グレード、乾燥機性能、初期含水率により調整する。乾燥不足は加水分解、銀条、物性低下の原因となる。
シリンダー温度230〜260℃程度難燃、GF強化、流動グレードでは推奨条件が異なる。
金型温度50〜100℃程度寸法安定性、結晶化、表面外観、反りに影響する。
成形収縮率非強化:1.2〜2.2%程度
GF強化:0.2〜1.0%程度
流動方向、直角方向、GF量、肉厚、金型温度により大きく変化する。
滞留管理過剰滞留を避ける熱劣化、分子量低下、変色、ガス、アウトガスの原因となる。

代表的な物性値又は機械的性質

項目単位非強化PBTGF30%強化PBT難燃GF強化PBT備考
密度g/cm31.30〜1.321.50〜1.601.55〜1.70充填材、難燃剤、GF量により変化する。
引張強さMPa45〜60110〜15090〜140乾燥状態、試験速度、GF配向により変化する。
伸び50〜2002〜51.5〜4GF強化品では伸びが大きく低下する。
曲げ弾性率MPa2,200〜2,8007,000〜11,0007,000〜12,000GF、無機フィラー、結晶化度により変化する。
アイゾット衝撃強さkJ/m23〜86〜125〜10ノッチ付きの代表値であり、耐衝撃改良品では高くなる。
荷重たわみ温度55〜80190〜220190〜2151.8MPa荷重の目安である。GF強化で大きく向上する。
融点220〜230220〜230220〜230結晶性ポリエステルである。
ガラス転移温度40〜6040〜6040〜60測定法により差が出る。
連続使用温度80〜120120〜150120〜150荷重、空気中、湿熱、薬品接触で実用温度は変わる。
吸水率0.1〜0.30.1〜0.30.1〜0.423℃水中24時間の目安である。PA系樹脂より低吸水で寸法安定性に優れる。
体積抵抗率Ω・cm1015〜10171014〜10161013〜1016湿度、難燃剤、カーボン系添加剤、汚染により変化する。
難燃性UL94HB相当が多いHB〜V-0相当V-0相当を狙うグレードが多い厚み、色、添加剤、認証グレードで確認が必要である。
酸素指数20〜23程度20〜24程度25〜35以上の場合がある難燃剤の種類と配合量により大きく変化する。

上記の数値は代表値又は目安であり、保証値ではない。実際の設計では、メーカーのグレード別データシート、成形条件、アニール条件、吸湿状態、温度、荷重、応力、薬品接触時間、成形品肉厚を確認する必要がある。

耐薬品性

薬品分類代表薬品評価実務上の注意点
酸類希塩酸、希硫酸、酢酸○〜△低濃度・常温では使用可能な場合があるが、高濃度、長時間、高温では加水分解や劣化に注意する。
強酸濃硫酸、濃硝酸、発煙酸×酸化性強酸では分解、脆化、変色が起こりやすい。
アルカリ類水酸化ナトリウム、KOH、アルカリ洗浄剤△〜×ポリエステル結合がアルカリ加水分解を受けやすい。濃度、温度、接触時間の影響が大きい。
低級アルコール類メタノール、エタノール、IPA○〜◎常温短時間では比較的安定な場合が多いが、応力下、高温、長期浸漬では確認が必要である。
高級アルコール類グリセリン、ベンジルアルコール、MMB○〜△溶媒の極性、温度、添加剤抽出、応力割れを確認する必要がある。
芳香族炭化水素類トルエン、キシレン、エチルベンゼン○〜△短時間では比較的安定な場合があるが、膨潤、応力割れ、添加剤抽出に注意する。
脂肪族炭化水素類ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリット◎〜○一般に良好であるが、燃料添加剤、温度、応力下での確認が必要である。
ケトンアセトン、MEK、MIBK膨潤、白化、応力割れ、表面荒れが起こる場合がある。
エステル酢酸エチル、酢酸ブチル、DBE△〜×SP値が近く、膨潤や軟化が起こりやすい場合がある。長時間接触には注意する。
塩素系溶剤ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン×溶解、膨潤、クラックのリスクが高い。洗浄用途では避けるのが基本である。
水・温水水、温水、湿熱○〜△常温水では比較的安定であるが、高温水、蒸気、長期湿熱では加水分解に注意する。
鉱物油、潤滑油、グリース、作動油◎〜○一般に耐油性は良好である。添加剤、酸化劣化油、高温油では評価が必要である。
燃料ガソリン、軽油、燃料油燃料組成、アルコール混合燃料、温度、内圧、応力を確認する必要がある。

耐薬品性評価は、PBTのグレード、結晶化度、ガラス繊維量、難燃剤、成形時の残留応力、薬品濃度、温度、接触時間、荷重、応力に強く依存する。特に、アルカリ洗浄剤、高温水、蒸気、酸性洗浄剤、塩素系溶剤、エステル系溶剤では、実部品形状での浸漬試験、応力負荷試験、湿熱試験を行うことが望ましい。

SP値(溶解度パラメータ)
項目内容
代表的なSP値20〜22 MPa1/2程度
材料分類芳香族ポリエステル系結晶性樹脂
判断上の注意SP値は溶解・膨潤傾向を見るための目安であり、耐薬品性を単独で判断する指標ではない。PBTでは結晶化度、加水分解、応力割れ、添加剤抽出、GF界面、温度、薬品濃度の影響が大きい。
溶解性の目安
SP値差溶解・膨潤の目安判定
0〜2膨潤・軟化しやすい×
2〜5条件により膨潤する
5〜8短時間接触では比較的安定
8以上溶解・膨潤しにくい
SP値から見た耐溶剤性

PBTの代表SP値を21 MPa1/2程度と仮定した場合の、代表溶剤とのSP値差と溶解・膨潤傾向の目安を以下に示す。実際には、HSP、結晶化度、温度、薬品濃度、接触時間、応力、成形品の残留応力を含めて判断する必要がある。

薬品名代表SP値
MPa1/2
PBTとの差SP値から見た評価実務上の注意
47.9約26.9SP値差は大きいが、高温水や蒸気では加水分解に注意する。
メタノール29.7約8.7◎〜○常温短時間では比較的安定な場合が多い。
エタノール26.0約5.0応力下、長時間浸漬、高温では確認が必要である。
IPA23.5約2.5SP値差は小さめだが、実用上は比較的安定な場合がある。応力割れ試験で確認する。
アセトン20.3約0.7×SP値上は近く、膨潤、白化、応力割れに注意する。
MEK19.0約2.0△〜×長時間接触や応力下でリスクがある。
酢酸エチル18.6約2.4膨潤、軟化、添加剤抽出に注意する。
トルエン18.2約2.8短時間では耐える場合があるが、長期浸漬や応力下では評価が必要である。
キシレン18.0約3.0膨潤、応力割れ、表面変化を確認する。
ヘキサン14.9約6.1一般に比較的良好であるが、添加剤抽出や燃料成分の影響に注意する。
ジクロロメタン20.2約0.8×溶解・膨潤リスクが高く、洗浄用途では避けるのが基本である。
クロロホルム19.0約2.0×塩素系溶剤はPBTに対して不適となる場合が多い。

評価基準は、◎非常に良好、○概ね良好、△注意が必要、×不適の目安である。SP値差が大きくても、加水分解、酸化、アルカリ分解、応力割れが起こる場合があるため、耐薬品性はSP値だけで判断しない。

製法

工程内容実務上の注意点
原料テレフタル酸又はジメチルテレフタレート、1,4-ブタンジオールを主原料とする。原料純度、水分、触媒、末端基制御が分子量と耐加水分解性に影響する。
エステル化又はエステル交換テレフタル酸法ではエステル化、DMT法ではエステル交換によりオリゴマーを形成する。副生する水又はメタノールを除去しながら反応を進める。
重縮合高温・減圧下で重縮合し、高分子量PBTを得る。過剰な熱履歴は分解、着色、分子量低下の原因となる。
ペレット化溶融押出後、ストランドカット又は水中カットでペレット化する。水分管理、熱履歴、異物管理が重要である。
コンパウンドガラス繊維、難燃剤、安定剤、滑剤、顔料、無機フィラー、エラストマーなどを配合する。GF折損、分散、難燃剤分解、アウトガス、成形流動性を確認する。
品質管理粘度、末端カルボキシル基、水分、灰分、色相、機械物性、電気特性などを管理する。耐加水分解用途では末端基量や湿熱後物性保持率が重要である。
代表的な反応式

テレフタル酸法の概略反応式は、以下のように表される。

n HOOC−C6H4−COOH + n HO−(CH2)4−OH → [−O−(CH2)4−O−CO−C6H4−CO−]n + 2n H2O

ジメチルテレフタレート法の概略反応式は、以下のように表される。

n CH3OOC−C6H4−COOCH3 + n HO−(CH2)4−OH → [−O−(CH2)4−O−CO−C6H4−CO−]n + 2n CH3OH

実際の工業製法では、反応平衡、触媒、減圧、温度、滞留時間、末端基制御、固相重合の有無により、分子量、流動性、耐熱性、耐加水分解性、色相が変化する。

詳細な利用用途

用途分野代表用途採用理由注意点
自動車コネクタ、センサーケース、リレー部品、ECU周辺部品、モーター部品、ランプ部品耐熱性、電気絶縁性、寸法安定性、耐油性、成形性のバランスが良い。高温高湿、冷熱サイクル、燃料、油、塩水、振動、応力下での評価が必要である。
電気・電子コネクタ、ソケット、スイッチ、リレー、ブレーカー、コイルボビン難燃化しやすく、電気特性と成形寸法安定性に優れる。UL認証、CTI、耐トラッキング性、はんだ耐熱、アウトガスを確認する。
機械部品ギア、カム、軸受、摺動ガイド、ポンプ部品耐摩耗性、剛性、耐油性、成形性が良い。摩耗粉、潤滑条件、相手材、荷重、温度、クリープを確認する。
医療医療機器部品、電装ケース、機構部品寸法安定性、成形性、電気特性を活かせる場合がある。医療用途では生体適合性、滅菌耐性、抽出物、規制適合を個別グレードで確認する必要がある。
食品機械ポンプ部品、搬送部品、センサー部品、電装ケース耐油性、低吸水、寸法安定性が有利な場合がある。食品接触規制、洗浄剤、アルカリ洗浄、高温水、蒸気殺菌への耐性を確認する。
建築・設備電気設備部品、制御盤部品、照明部品、配線部品難燃性、寸法安定性、電気絶縁性を活かせる。屋外では紫外線、熱、湿気、難燃規格、長期耐久性を確認する。
家電スイッチ、モーター周辺部品、ファン部品、電源部品精密成形性、耐熱性、電気特性、コストバランスが良い。難燃、発煙、臭気、アウトガス、リサイクル性を確認する。
フィルム・シート高機能フィルム、電気絶縁フィルム、成形シート耐薬品性、電気特性、寸法安定性を活かせる。一般には射出成形用途が中心であり、専用グレードの確認が必要である。

関連材料との比較

比較材料特徴対象材料との違い
ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトル、フィルム、繊維で広く使用される芳香族ポリエステルである。PBTはPETより結晶化速度が速く、射出成形で扱いやすい場合が多い。PETはフィルム、ボトル、繊維用途で強い。
ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)柔軟性、弾性回復性に特徴を持つポリエステルである。PBTは電気電子・自動車成形材料としての実績とグレード展開が豊富である。PTTは繊維や柔軟性用途で特徴が出やすい。
ポリブチレンナフタレート(PBN)ナフタレン骨格を持つ高機能ポリエステルである。PBNは耐熱性、バリア性、寸法安定性で有利な場合があるが、PBTは汎用性、成形材料としての入手性、コストで有利である。
ナイロン6(PA6)靱性、耐摩耗性、耐衝撃性に優れるポリアミドである。PBTはPA6より低吸水で寸法安定性が良い場合が多い。PA6は靱性や耐摩耗用途で有利な場合がある。
ナイロン66(PA66)PA6より高融点で、機械強度、耐熱性に優れるポリアミドである。PBTはPA66より低吸水で電気特性の湿度依存が小さい場合が多い。PA66-GFは高温強度や靱性で有利な場合がある。
ポリカーボネート(PC)透明性、耐衝撃性、寸法安定性に優れる非晶性エンプラである。PBTは耐薬品性、耐油性、結晶性による耐溶剤性で有利な場合がある。PCは透明性と衝撃性で有利である。
ポリフェニレンサルファイド(PPS)耐熱性、耐薬品性、寸法安定性に優れるスーパーエンプラである。PPSは高温耐薬品性でPBTより有利である。一方、PBTは成形性、外観、コスト、グレード選択性で有利な場合がある。
ポリアセタール(POM)摺動性、耐摩耗性、寸法安定性に優れる結晶性エンプラである。POMは摺動部品で強いが、難燃性や電気電子用途ではPBTが選ばれやすい。PBTは高温高湿での加水分解、POMは酸や塩素系薬品に注意する。

代表的なメーカー

メーカー代表製品・ブランド概要
東レトレコン、TORAYCONPBT樹脂の代表的な国内メーカーであり、自動車、電気電子、機械部品向けの各種グレードを展開している。
ポリプラスチックスDURANEXPBT成形材料の代表的メーカーであり、GF強化、難燃、低反り、耐加水分解などのグレードを展開している。
三菱ケミカルNOVADURANPBT樹脂の代表的ブランドを展開し、電気電子、自動車、高機能フィルム用途などに使用される。
BASFUltradurグローバルに展開されるPBT樹脂ブランドであり、自動車、電気電子部品向けの各種グレードがある。
CelaneseCelanexPBT樹脂の代表的なグローバルブランドであり、電気電子、自動車、工業部品向けに使用される。
SABICVALOXPBT系エンプラの代表的ブランドであり、寸法安定性、耐薬品性、電気特性を活かした用途に使用される。
EnvaliorArniteポリエステル系エンプラとしてPBT系グレードを展開しており、自動車、電気電子、機械部品向けに使用される。
LANXESSPocanPBT及びPBTブレンド系のエンプラを展開し、電気電子、自動車、精密部品用途で使用される。

代表メーカー・ブランドは、公開情報で確認できる実在例を中心に記載している。実際の採用では、グレード別データシート、UL登録、RoHS、REACH、食品接触、FDA、医療用途、難燃規格、リサイクル材含有、ハロゲンフリー要求などを個別に確認する必要がある。

法規制・規格上の注意

項目確認内容注意点
RoHS鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、特定臭素系難燃剤、フタル酸エステル類など難燃PBTでは難燃剤、顔料、安定剤の適合確認が必要である。
REACHSVHC、制限物質、登録物質輸出用途では最新の規制リスト確認が必要である。
UL94HB、V-2、V-0など厚み、色、グレードごとに認証が異なる。
食品衛生・食品接触日本の食品衛生法、ポジティブリスト、FDA、EU食品接触規則など食品接触用途では、樹脂だけでなく添加剤、色、使用温度、接触食品の種類を確認する。
医療用途生体適合性、滅菌耐性、抽出物、溶出物一般工業グレードを医療用途に転用することは避け、医療用途対応可否をメーカーに確認する。
アウトガス揮発成分、難燃剤由来成分、潤滑剤、低分子成分光学部品、電子部品、密閉空間ではアウトガス評価が必要である。

用途別選定の目安

用途推奨されやすいグレード主な確認項目
コネクタ難燃GF強化PBT、低反りPBTUL94、CTI、寸法安定性、ウェルド強度、はんだ耐熱、吸湿後電気特性
ギア摺動PBT、GF強化PBT摩耗、摩擦係数、騒音、相手材、潤滑条件、クリープ
軸受・摺動部品摺動改良PBT、PTFE配合PBT摩耗粉、面圧、速度、発熱、潤滑剤、寸法変化
チューブ押出用PBT、耐薬品PBT押出安定性、耐薬品性、曲げ疲労、内圧、加水分解
筐体難燃PBT、低反りPBT、外観改良PBT難燃性、反り、表面外観、塗装性、耐候性
フィルムフィルム用PBT厚み精度、結晶化、熱収縮、電気特性、耐薬品性
車載センサー部品耐加水分解GF強化PBT、難燃PBT湿熱、冷熱サイクル、耐油、耐燃料、寸法安定性、端子保持力

注意点

  • PBTはポリエステル系樹脂であるため、高温水、蒸気、強酸、強アルカリでは加水分解に注意が必要である。
  • 成形前乾燥が不十分な場合、成形中に分子量低下、銀条、脆化、機械強度低下が起こる場合がある。
  • GF強化グレードでは、流動方向と直角方向で収縮率が異なり、反りや寸法異方性が生じやすい。
  • 難燃グレードでは、難燃剤の種類により電気特性、耐トラッキング性、アウトガス、金型腐食性、リサイクル性が変化する。
  • 摺動グレードでは、滑剤やPTFEなどにより摩擦特性は改善されるが、塗装性、接着性、接点汚染、アウトガスに注意が必要である。
  • 屋外用途では、紫外線、熱、湿気、酸化劣化により変色、脆化が起こる場合があるため、耐候グレードの確認が必要である。
  • 食品機械や医療用途では、材料名だけで判断せず、グレード別の法規制適合、抽出物、洗浄剤耐性、滅菌条件を確認する必要がある。

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