概要
| 材料名 | AES樹脂 |
|---|---|
| 略記号 | AES |
| 英語名 | Acrylonitrile Ethylene-propylene-diene Styrene |
| 分類 | 耐候性スチレン系樹脂 |
| 構造・主成分 | EPDM存在下でスチレン・アクリロニトリルをグラフト共重合した樹脂 |
| 主な用途 | 屋外筐体、自動車外装、建材、電気部品、看板部品 |
AES樹脂は、EPDM存在下でスチレン・アクリロニトリルをグラフト共重合した樹脂である。ABSより耐候性が高く、耐衝撃性、外観性、成形性が良い。
材料選定では、透明性は低く、有機溶剤には注意。用途、温度、荷重、薬品、成形方法に応じてグレードを選定する必要がある。
特徴
- ABSより耐候性が高く、耐衝撃性、外観性、成形性が良い
- 基本的特性は、ABS樹脂と同等。
- ゴム成分をエチレンプロピレンジエンゴムとすることで、ABS樹脂より光劣化に対して良好な安定性があり、長期屋外使用が可能。
- 剛性があり、堅牢で、機械的性質のバランスが取れている。
- 引張り強さ、曲げ強さ、衝撃強さ、クリープ強さなどにすぐれている。
- 耐熱性は、一般的な用途範囲では充分なものをゆうする。
- 荷重たわみ温度は、80~110℃で、耐寒性にもすぐれる。
- グレード、充填材、共重合成分、硬化条件により物性が大きく変化する。
- 実使用では温度、湿度、応力、薬品接触時間を含めて評価する必要がある。
- 電気的性質にすぐれている。
- 成形加工性にすぐれる。
- 成形収縮率が小さい。
- 表面光沢にすぐれ、任意な着色が可能。
- 酸・アルカリには極めて強いが非晶性のため有機溶剤には侵される。
- 燃えると独特のにおいとすすを出す。
- 成形前に予備乾燥が必要。
- 透明性は低く、有機溶剤には注意
長所
- ABSより耐候性が高く、耐衝撃性、外観性、成形性が良い
- 用途に応じたグレード展開がある。
- 金属、ガラス、汎用樹脂の代替材料として使える場合がある。
短所
- 透明性は低く、有機溶剤には注意
- 高温、応力、薬品、吸水、添加剤の影響で性能が変化する。
- 量産前にはメーカー物性表と実使用条件での確認が必要である。
成形加工
AES樹脂の加工性は種類とグレードにより異なる。熱可塑性樹脂では射出成形・押出成形が中心となり、熱硬化性樹脂では注型、圧縮、積層、硬化成形が中心となる。
| 加工方法 | 適性 | 主な製品例 |
|---|---|---|
| 射出成形 | ○ | グレードにより成形部品、電気電子部品、機械部品に使用する |
| 押出成形 | ○ | シート、フィルム、チューブ、板材に使用する |
| 圧縮・注型・硬化成形 | △〜◎ | 熱硬化性樹脂や高粘度材料では主要加工法となる |
| 切削加工 | ○ | 丸棒、板材、試作部品、治具に使用する |
構造式
SAN相とEPDMゴム相からなる多相系構造。構造中の官能基、結晶性、架橋密度、芳香族骨格、充填材の有無により、耐熱性、耐薬品性、機械的性質、成形性が変化する。
AESは一般に以下のような「グラフト構造」または「相分離構造」を取る
- スチレン+アクリロニトリル共重合体(SAN)+ エチレン系ゴム(EPR / EPDM)にグラフト
概念的構造:(SAN)x−graft−(EPR/EPDM)y
種類
標準グレード
| 名称 | 標準AES樹脂 |
|---|---|
| 構成 | EPDM存在下でスチレン・アクリロニトリルをグラフト共重合した樹脂 |
| 特徴 | ABSより耐候性が高く、耐衝撃性、外観性、成形性が良い |
| 主な用途 | 屋外筐体、自動車外装、建材、電気部品、看板部品 |
特徴
- 標準的な物性バランスを持つ。
- 汎用的な成形・加工用途に使いやすい。
強化・改質グレード
| 名称 | 強化・改質AES樹脂 |
|---|---|
| 構成 | ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、耐候剤、潤滑剤、共重合成分などで改質したグレード |
| 特徴 | 剛性、耐熱性、耐候性、難燃性、摺動性、寸法安定性などを改善する |
| 主な用途 | 電気電子部品、自動車部品、機械部品、構造部品、機能部材 |
特徴
- 標準グレードより特定性能を高めた材料である。
- 充填材により比重、成形収縮、異方性、耐薬品性が変化する。
代表的な物性値又は機械的性質
| 項目 | 単位 | 代表値・範囲 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm³ | 1.03 ~ 1.08 | ABSに近い |
| 引張強さ | MPa | 35 ~ 50 | グレードにより変動 |
| 引張弾性率 | MPa | 1,800 ~ 2,500 | 剛性はABS並み |
| 伸び | % | 10 ~ 40 | 耐衝撃グレードでは高め |
| 曲げ強さ | MPa | 55 ~ 80 | 成形品の剛性指標 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 1,800 ~ 2,700 | 一般ABSと同程度 |
| シャルピー衝撃強さ | kJ/m² | 10 ~ 30 | ノッチ付き、グレード差大 |
| アイゾット衝撃強さ | J/m | 100 ~ 400 | 耐衝撃性に優れる |
| ロックウェル硬さ | — | R80 ~ R110 | 表面硬さ |
| 荷重たわみ温度 | ℃ | 80 ~ 100 | 1.8 MPa条件の目安 |
| ビカット軟化温度 | ℃ | 90 ~ 110 | 耐熱グレードで高い |
| 線膨張係数 | /℃ | 7 ~ 10 × 10-5 | 非強化品の目安 |
| 成形収縮率 | % | 0.4 ~ 0.7 | 射出成形時の目安 |
| 吸水率 | % | 0.2 ~ 0.5 | 23℃水中24h程度 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1014 ~ 1016 | 電気絶縁性良好 |
| 難燃性 | UL94 | HB程度 | 難燃グレードは別 |
耐薬品性
酸・アルカリに比較的良好。ケトン・芳香族溶剤で膨潤・クラック。
| 薬品・溶剤 | 耐性 | 備考 |
|---|---|---|
| 水 | ○ | 多くは常温で比較的安定であるが、吸水・加水分解型材料では注意する |
| 酸 | △〜○ | 強酸では劣化する材料がある |
| アルカリ | △〜○ | ポリエステル、PC、熱硬化性樹脂では高温・高濃度に注意する |
| アルコール | ○〜△ | 応力クラックや膨潤は材料により異なる |
| ケトン | △〜× | 非晶性樹脂や塗料系樹脂では膨潤・溶解に注意する |
| 芳香族溶剤 | △〜× | 膨潤、白化、クラックの可能性がある |
| 油・燃料 | ○〜△ | ポリアミド、POM、PBT、PPS、PEEKなどは比較的良好な場合が多い |
更に詳しくはプラスチックの耐薬品性一覧表を参照。
SP値(溶解度パラメータ)
AES樹脂のSP値はグレード、結晶化度、架橋密度、充填材により変動する。溶解性はSP値だけでなく、温度、応力、薬品濃度、接触時間で判断する必要がある。
| 項目 | SP値(δ) | 備考 |
|---|---|---|
| SP値(AES全体) | 18.0 ~ 19.5MPa1/2 | AES全体の代表値 |
| AS相(アクリロニトリル・スチレン) | 19.2 ~ 20.1MPa1/2 | 極性成分 |
| EPDMゴム相 | 16.0 ~ 17.0MPa1/2 | 非極性ゴム成分 |
溶解性の目安
| Δδ | 挙動 |
|---|---|
| 0〜2 | 溶解しやすい |
| 2〜5 | 膨潤・軟化 |
| 5以上 | 溶解しにくい |
SP値から見た耐溶剤性
| 溶剤 | SP値 MPa1/2 | 耐性 | 影響・特徴 |
|---|---|---|---|
| 水 | 47.9 | ◎ | ほぼ影響なし |
| メタノール | 29.7 | ○ | 短時間なら安定 |
| エタノール | 26.0 | ○ | 比較的良好 |
| IPA(イソプロパノール) | 23.5 | ○ | 軽微な白化の可能性 |
| ブタノール | 23.3 | △ | 長時間接触で膨潤 |
| アセトン | 20.3 | × | 急速に侵される |
| MEK | 19.0 | × | 溶解・クラック発生 |
| 酢酸エチル | 18.6 | × | 強い膨潤 |
| トルエン | 18.2 | × | AESのSP値に近く危険 |
| キシレン | 18.0 | × | 膨潤・軟化 |
| THF | 19.4 | × | 溶解しやすい |
| DMF | 24.7 | × | 強極性で侵す |
| NMP | 23.1 | × | 高浸透性で危険 |
| ヘキサン | 14.9 | ◎ | 影響小 |
| 鉱物油 | 14 ~ 16 | ◎ | 耐油性良好 |
◎:非常に良好 ○:概ね良好 △:注意が必要 ×:不適
AES樹脂は、SP値が近い溶剤(約18~20 MPa1/2付近)に対して膨潤・応力割れ・溶解が発生しやすい傾向があります。特にケトン系、芳香族系、エステル系溶剤には注意が必要です。
実務上の注意
- SP値は溶解・膨潤予測の一次判断であり、耐久性そのものではない。
- 成形残留応力がある場合は、短時間の薬品接触でもクラックが発生する場合がある。
- 最終判断は実使用条件での浸漬試験、応力負荷試験、温度サイクル試験で行う。
製法
- エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)の存在下で、スチレン、アクリロニトリルをグラフト共重合して製造される。
- ABSがブタジエン由来の二重結合により耐候性が不充分であるため、不飽和結合の少ないエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)をブタジエン系ゴムの代わりに使用し耐候性(耐紫外線)を改良したものである。
詳細な利用用途
代表用途
- 屋外筐体
- 自動車外装
- 建材
- 電気部品
- 看板部品
工業用途
- 電気電子部品
- 自動車部品
- 機械部品
- 耐熱・耐薬品部材
- フィルム、シート、塗料、接着、複合材用途
関連材料との比較
代表的なメーカー
| メーカー | 代表的な製品・商品名 | 備考 |
|---|---|---|
| テクノUMG | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |
| LG Chem | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |
| INEOS Styrolution | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |
| SABIC | 代表グレード又は関連製品 | 詳細はメーカー技術資料で確認する |